壁]v・)<壁的情報局

合成音声ソフトを用いた曲紹介やクリアしたゲームの感想を載せてます!

壁]v・)<PSP「ナルキッソス~もしも明日があるなら~portable」感想

2013年4月27日に一通りクリア。
その感想を書いていきたいと思います。
ネタバレはなしの方向で。

公式サイト(アーカイブ)はこちら

f:id:aryan1226:20210704173901j:plain 【総評】 ★★★★☆
シナリオ ★★★★☆
グラフィック ★★★☆☆
音楽 ★★★★☆
システム ★★★★★
総プレイ時間 約50時間

=感想=
一言で言えば、「賛否両論になる、死というものを叩きつけてくる商業作品としては珍しい作品」。
「感動作」と商業的には謳われている本作ですが、本来は「そうならないように作られた作品」であることを忘れてはいけないと思います。
胸を打たれるというよりは、そこから何を思うか? 何をどう感じ、どう繋げていくのか。そこが重要なんじゃないかと。
とても得るものが多い作品でした。
主に緩和ケア病棟(ホスピス)の入院患者と、その周りの人、所謂「残すもの」と「残されるもの」の相容れない想いを真摯に描いています。
ひとつだけ、時代すら世界観すら違う物語がありますが。

ゲームというのを躊躇する程度にゲーム性はありません。
選択肢は外伝の「死神の花嫁」以外には存在せず、しかもその選択肢はストーリーに全く影響を及ぼしません。
ひたすらに〇を押して読み進めていく、というものです。

第一章、第二章、外伝は同人で公開されたもののリメイク。
最終章が新規書き下ろしで収録されています。
エピローグを含むすべてのシナリオを読むと、クラシックモード(第一章、第二章の商業用修正版)が解禁され、シナリオを時系列に並べられるようになります。

さて、では細かい感想をば。

【シナリオ:★★★★☆】
第一章はフリー版で既にプレイ済みだったので、追加要素にぶっちゃけ戸惑いましたw
誰だよお前ら的なことをずっと思っていましたが、最終的にぼくはありだと思いました。
非常にいい味を出してくれていたと思います。
セツミさんが非常に可愛らしい場面が増えていたのが印象的でした。

第二章以降はPSP版が初見だったので比較はできないのですが、第二章はひたすら姫子さんの観察力に唖然としていました。
そして過去の出来事と、そして今に至るそれまでの思いと葛藤は見ていて胸に来るものがありました。
第二章をやっていると、第一章がやりたくなります。

最終章は出会って関係を築いていくところから丁寧に描写されていたので、後半は非常に胸が痛かったです。
全ての始まりの話。
やっていて一番胸が苦しかったのはこの話かもしれません。

外伝は4つの話が収録されています。
ライターさんも「小さなイリス」を除いて違う方なので、文章の書き方にも内容にも凄く差があります。
「死神の花嫁」
主人公とヒロインより、脇役の佐野が凄く良い味を出していましたw
苦しみながら生きるのが良いのか、死んで楽になったほうがいいのか?
答えは出ない問いですが、それを考えさせられる話でした。
しかし、主人公の中途半端さっぷりにはちょっとげんなり……。
「-Ci-シーラスの高さへ」
正直一番ダレた話でした。
後半はよかったんですが、そこまでが流石に眠くなりました。
それにしても、ナルキッソスでなくても良かったんじゃないかと。
とあるギャルゲーの1ルートとしてはありだったんじゃないかな。
話自体は好きですし、最後のエレベータに乗り込むシーンの台詞は屈指の台詞だと思います。
でも後半までに至る1時間以上は非常に苦痛でした。
メサイア
一番度肝を抜かれたのはこの話でした。
そして一番テーマに共感したのもこの話でした。
終わった後にもう一度プロローグを読んでほしいです。
ラストの怒涛の展開に、終わってしばらくは呆然としてしまいました。
第一章を彷彿とさせるシーンもあったりと、いろんな感情が湧き上がりました。
主役の二人も、脇を固めるキャラクターも、全てなくてはならない存在だったと思います。
「小さなイリス」
舞台も時代も世界観も何もかもが違うお話でした。
他の話に比べてすごくあっさりと終わった印象が。
それでもぐっと惹きこまれるのは早かったです。
教会の信者にぞっとしました。
人はこんなにも真っ直ぐに残酷になれるものなのかと、考えさせられたお話です。

エピローグはそれぞれのその後を描いたものでした。
そして思うのは「姫子さん半端ない」ww
ただし、全てのエピソード+エピローグを読んで出現する、最終エピローグは毛色の違うものになっています。
ぼくは締めにはとてもいいエピローグだったと思います。
これで、ナルキッソスは終わるんだなと。
今までこの作品で得た感情が一気に溢れたような、そんな感じがしました。

【グラフィック:★★★☆☆】
正直、フリー版で描かれていたごとPさんの方が良かったな、とw
ベッドで横になっているキャラの顔の違和感が半端なかったです。
あと、非常にクセが強いイラストなので、受け付けない人には受け付けないんだろうなと。
ぼくは最初こそ慣れませんでしたが、第二章辺りからは全然気にならなかったです(ただし上記は除く)。

【音楽:★★★★★】
全てのシーンにおいて素晴らしいの一言に尽きます。
サントラが出ていないのが残念なほど。
本当に素晴らしかったです。

【システム:★★★★★】
痒いところまで手が届くとはまさにこのこと。
シーン選択可、バックログ、クイックセーブ可、シーンが進むごとにオートクイックセーブ、選択肢が出る場面でオートクイックセーブ、既読選択肢の色の変化、スキップ機能、BGM・SE・ボイスそれぞれに細かいメーター調整……とここまで至れり尽くせり。
おまけモードで全てのスチルを見られますし、BGMも聴くことができます。
BGMに至っては、全曲リピート、1曲リピート、ランダム再生と、PSPの電池が持ちさえすれば、サントラはこれで賄えちゃいますw
……だからこそサントラが出ていないのかもしれませんね。


以上です。
ここまでお付き合いいただきありがとうございます!
おそらくこの作品に触れると、今までと違った視点で物事が見られるようになるんじゃないかと思います。
本当に素晴らしい作品でした。